2020年8月28日金曜日

無敵の主人公よりしろ


 


『DolL』の主人公はよりしろである。

彼はプレイヤーの分身である。だから俺にとっては彼である。

プレイヤーが女性ならば彼女だろうし、男性でも女性でもないなら彼でも彼女でもない。

そういう理由で彼は自分のことをボクと呼ぶ。

私という一人称にしようかとも考えたが、もっとフランクなボクに落ち着いた。

とは言え、このあたりはノリで決めた部分である。

この項で書きたい内容はもっとシステム的なことである。


AI戦闘を完成させるために、マニュアル操作をする主人公が必要だという話は既にした。

ここでは、なぜその主人公が無敵になったかということについて書く。


昔から、無敵の主人公というのは存在する。

とは言っても、そのほとんどは設定上無敵というだけで、

ゲームの中では無敵ではない。

主人公が完全に無敵というゲームは、俺は寡聞にして知らない。

なろう系の小説にはそういうものもあるかもしれないが、

ゲームにした時に無敵ではゲームとして成り立たない。


だがよりしろは完全に無敵である。

彼がやられる可能性があるのは、裏ボスの即死攻撃だけであり、

HPが減るという状況は存在しない(おそらく)。

なぜ無敵の主人公が存在しうるのか?

いかにして彼は生まれたのか?


彼が無敵になった最大の理由は、アストロンを作れなかったからである。

アストロンとは、ドラクエシリーズに出てくる呪文で、

唱えると味方全体が数ターン無敵になるかわりに一切の行動が出来なくなる。


『DolL』の完成版では、フロアボスはそれほど複雑な行動パターンをもたないが、

当初はもっと複雑にするつもりだった。

例えば、最初の2ターンは全力で攻撃してきて、次の2ターンは休む、というように。

それは初見ではわからない。

無策で挑んだら確実に全滅する。

それくらいの強敵にすることを考えていた。

結局それはコンテスト向きの仕様ではないと考えたので最終的には採用しなかったが、

そういうゲームにするならアストロンは必須だと俺は考える。

最近は死にゲーというジャンルのアクションRPGもあるが、

あれにもアストロンが欲しい。

敵の行動を見たいのに、攻撃を避けるのに必死になってしまう。

死にゲーが好きという人はそれでいいのかもしれないが、

俺はゲームでストレスを溜めたくない。

だからボスの行動パターンをじっくり観察するためにアストロンが必要だと考えた。


しかし、ここでも技術力のなさが立ちはだかった。

どうすればアストロンの効果を実装できるのかがわからない。

5分ほど悩んだ後、こう思った。

「なら初めから無敵にすればいいのでは」

こうしてよりしろは無敵になった。


ボスの行動を単純にしたので、無敵であることは

システム的には必須ではなかったかもしれない。

だが物語的には意味を持つこととなった。

プレイヤーの分身として、絶対にダメージを受けない。

画面の向こうのプレイヤーがダメージを受けないように。

意図したことではなかったが、『DolL』が伝えるべきメッセージを持つ結果となった。


俺は、ゲームの主人公はプレイヤーだと思っている。

プレイヤーが操作するキャラクターは、ロトの末裔でも天空の勇者でも、

クラウドでもスコールでも、スネークでもアーロイでも桐生一馬でもいいが、

ゲームの主人公はプレイヤーでなければならないと考えている。

そうでないなら、ゲームとして存在する必要はない。

映画や小説や、漫画やアニメで表現すればいい。

他のメディアにはない、ゲームの独自性が、プレイヤーが主人公になるということだ。


そうは言っても、ゲームのキャラクターがやられた時に

プレイヤーがやられるわけにはいかない。

昔、世にも奇妙な物語でゲームのキャラクターがやられると

現実世界の人間が消えるという話があったが、

ゲーム大好き少年にとってあの話は恐ろしかった。

話が逸れたが、ゲームの主人公がプレイヤーであることは

それがゲームであることの前提条件だと思う。


もしそれが、主人公とされるキャラクターが勝手に動くのを眺めているだけのものなら、

それは断じてゲームではない。

クソゲーですらない。ゲー無ですらない。

ゲームの仮面を被った、別の何かである。


この、主人公がプレイヤーであるというのは感覚の話だ。

どうすれば主人公がプレイヤーになるかということに、明確な答えはない。

強いて言えば、感情移入しやすく、そのキャラクターを

自分が操作しているという実感があることだろうか。


何度も言うが、よりしろは無敵である。

どんなに仲間たちがピンチになっても、彼自身はピンチにならない。

そういう意味で、彼はプレイヤーと同じである。

戦闘中に最初からできることは、ただみることだけ。

まさにプレイヤーと同じである。


これは別の項目で書くが、キャラクターメイキングをあきらめた結果、

パーティーは実質5人になった。

その際のバランスとしても、攻撃はできないがアイテムを使える

無敵キャラというのはちょうど良かったように思う。


無敵の主人公よりしろが生まれたのは偶然だったが、

今となってはそれも必然だったのかなと考えている。


最後にであるが、俺はこの主人公が大好きだ。

このキャラクターを生み出せて、世に出せたことを幸せだと思っている。


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